踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出た髭の人が世界中放浪した果てに結局海外大学院留学せずに帰国→家族でベトナム ハノイ移住→その後ドイツで大学院卒業→現在はカンボジアでのらくら。

髭、剣道 in KL。

5月9日

クアラルンプールは今日も雨のち曇り。

昼頃、昨日ぶらぶらしていて見つけたカレー屋にいってみた。
そこまで安くはないんだけど、旨そうだったのと、店の空気感が気に入った。

ガーリック・フィッシュカレーなるものをオーダー。バターナンをくれ、というと「ナンは15時からだ」と断られる。

仕方なくご飯を注文ししばし待つ。

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魚がゴロゴロ入っていて、そこまで辛くもなく、ガーリックがかなりの威力を発揮してこれはなかなかいける。
これは午後から自分の周りにくる人達は可哀想だぜ…!

カレーとご飯の皿の他に大皿がでてきたのけどこれはどうやって使うものなんだろうと悩む。結局お皿の上で混ぜたりしたけどこれで正しかったのか。


夕方からクアラルンプール剣友会に稽古にお邪魔することになっていたので、それまで宿で英語の勉強したり、昼寝したりしていた。というかほとんど寝ていた。

意思弱っ! と目覚めて自分を少し責めた。まあでも時間はもう戻ってこないし!とすぐに開きなおった。

そういうとこや、自分。
こういうところがいいところでもあるし、良くないところでもある。


さて、自分が英語の会話が上手くいかないときのことを考えてみると、どうやらリスニングの力が足りないことが会話が出来ないことに繋がっているようだ。

今の僕は第二言語で英語を習得した人となら大抵問題なく話せるが、ネイティブだと難しいことが多い。ネイティブの中でもはっきり発音する人は会話も弾むが、よく聞き取れない人は難しい。

つまり「聞き取れない」から「話せない」という状態なんだろう。単語を知らない事も大きく関係している!

よく「アメリカ英語とイギリス英語違うからねー」という人がいるけど、個人的にはアクセントが違うから聞き取れないというよりも、個人個人の発音の「もごもごした感じ」とか「舌足らずな感じ」とか「早すぎる」とかの方が問題だと思う。

僕はIeltsという試験のためにイギリス英語と呼ばれるものを勉強していると思うのだけど、イギリス人でも何いってるか全然わかんない人もいるし、アメリカ人でめっちゃわかる人もいる。

勉強して、慣れるしかないのだろうけど、会話が成り立たないというのはお互いにストレスフルだ。なんとか上達したいと思うのだが。(勉強しろよ)

やっぱり言葉が通じないと「怖い」と感じるものだと思う。会話を躊躇ってしまう自分もいる。弱いなあー


5時半、タイの道場でウーに紹介してもらったYanという女の子が旦那のPeterと一緒に車で宿まで迎えに来てくれた。

いきなり来て「稽古させてくれ!」という外国人をわざわざ車で迎えにきてくれるなんて、なんという優しさ…。

ふたりはすこし前に結婚していまYanのお腹の中には子どもがいる。ふたりはオーストラリアで出会っていまはYanの母国であるマレーシアで暮らしているらしい。

「Yanとその友達がマレーシア代表だったときはマレーシアの女子剣道は本当に強かったんだ!でもYanはいま妊娠中だし、一人は怪我してしまったし、もう一人は日本に行ってしまって。月末の世界大会はちょっと望み薄かなあ。」とPeterは運転しながらいう。

Peterは韓国人で、20年以上剣道をしている4段。腕が半端ないくらい太い。2人は本当に仲が良さそうで、PeterがYanをすごく大切にしているのがよくわかる。

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Japan Clubという建物で稽古が行われていた。中に入るとすごい人数が稽古をしていて驚いた。20台後半くらいの初心者もかなりいて、「剣道盛んなんや!」とびっくり。

稽古は週5回は行われているようで、皆熱心に取り組んでいるようだった。

防具と竹刀をお借りして稽古へ。

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数日前にバンコクで稽古をしたときよりも調子が良くない気がする。

と、いうよりも初めての場所で緊張している。僕は空気にのまれていた。「日本から4段が来たぞ」という皆からの目を気にして、「上手くやらないと」と気負っている自分がどこかにいた。

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これは本当に弱いところ。
何事をするにしても、僕はすぐに「気負ってしまう」のだ。

「打とう、とか打たれまい、としたらいかんよ。上手にやろうとしてもいかん。身体が固くなるからな。そこが隙になる。隙だらけや」
と剣道の師匠はよく言っていて、必ず

「自然に自然に」と続けるのだった。

いつも稽古している環境ではないところでは「自然に」するのが難しい。これは剣だけじゃなくて生活の色々なところで言えることだと思う。診療していても、オペを始めるときも。

さらに久しぶりに稽古をしたのなら思いきり動くだけで終わるのだが、数日前に稽古をしているため色々と考えてしまう自分がおり、「だめだな」と心の中でははじめから思ってしまっていた。


そういう時いつも
「自分にできるのは、自分を正すことだけや。」と師匠の声が聞こえる。

目の前の相手を倒すためでなくて、もっと先の自分を見据えて挑まねば。


稽古は活気があって楽しかった!

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稽古後のPeterとの一枚!

旅をしていると、日本で持っていた何ひとつ、僕を守ってはくれない。ひとつのところに長くいると人は心地良い空間を作って、いつの間にかそれを守るようになってしまうと思う。

いつまでも挑戦者でいたいから、旅にでた。

Peterに「どうしてそんなに長く旅をするって決めたの?」と聞かれたとき
「んー、医療が届きにくいところの現場を見たかったからかなー」と答えたけれど。

居心地が良くて、不自由ない生活の先に自分のわかりきった未来が見えた時、それを僕はつまらないと思った。

この身体一つで人と向かい合って、いつだって挑戦者でいられる。
コンプレックスしかなかった中学生の頃の自分はいつだって誰にも相手にされない「挑戦者」だった。


語学も、留学も、人との繋がりも、歯科も、剣道も、先の見えない未来も、思いっきり挑戦して、その先にある自分にまた出会いたい。

僕らにできるのは「自分を正すことだけ」。

ま、そう思いながらもダラダラしてしまうのだけどね…。あかん。




その後はアフター剣道!
ローカルな中華屋さんに連れてってもらった。

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ここの中華はこの旅で食べた物のなかで一番旨かったかもしれない!

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スプーンや食器がお湯に入れられて運ばれてきた。なんで?と聞くと、汚いことがあるから念のためここでももう一回洗うんだ、とPeter。

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みんな明日昇段審査みたいで審査の話をしていた。高段者が少ないため4段のピーターも審査員としてヘルプにいくらしい。

なんとこんなに美味しいご飯をPeterにご馳走になり。。。本当にありがたかった。誰かにご馳走してもらってばっかりやな自分!



帰り道。
車の中で話をしていて、Peterが大通りを左折しようとしたとき右から猛スピードでベンツが走ってきて、もう少しで衝突!というインシデントがあった。

運転していたのはインド人で、前を走りながらこちらを挑発し、左に車を止めろと促してくる。

Peterも怒っていて「お前が猛スピードで走ってきたからやろ!」とブチ切れ。

窓越しにFackin Idiot!!と罵り合いが始まった。

そのうちインド人が車から降りて来た。「お前俺が誰かわかってものいっとんのか!」
「知るか!こんな道で120kmもだすなや!」
「俺のスピードじゃ!文句あるか?!お前がちゃんと左右確認しろや!」
「したわ!お前が早すぎるからやろが!」

と言い合いは続く。Yanは助手席で不安そうに、もうやめといてPeter…と服の端をつかんでいる。

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かなり見なりのいいインド人でプライドが高そうな男だった。
僕は「Do you know who I am?!」と彼が叫ぶのをきいて、うわー、日本だけじゃなくて海外でも言うんやこれ…と喧嘩の時に「俺が誰かわかってものいってんのか」ということのダサさに思いを馳せていた。

知るか、って感じやよなあ。。。

後ろの車から一緒に剣道をしていた男の子がでてきて、インド人を制止する。

僕もとりあえず外にでて、やめとけー、もう何も当たってないねんからそれくらいでやめとけー、と遠隔射撃をしていた。

結局「あほが!」と吐き捨ててインド人はいってしまった。

Peterは運転を再開しても、糞インド人がー!と怒っていてYanはそれをなだめている。

PeterはYanのお腹をさすって、「ごめんな」と言って気持ちを落ち着けていた。

「すまんな、嫌な思いさせてしまって。俺が車のアクシデントに出会うときは99%インド人でな。ほんまあいつら腹立つ!」

Yanは横からPeterをなだめなていた。
「マレーシアではレイシストも多いし、民族が多いからお互いに色んな感情をもってるのよ。インド人は中でもマイノリティーだからね。彼らはなんていうかいつも自分たちのアイデンティティを守るのに必死なのよ」

とりあえず僕もPeterをなだめた。
どこの国でも起こることやんな、わかる。大阪でもよくある。

2人はまた僕を宿まで送ってくれた。

「子どもを大事にな!」

そういって僕は手を振ってわかれた。

あとで、FBで、今度はうちに泊まってくれとPeterが言ってくれて嬉しかった。


稽古の途中で色々考えたり、インド人の事があったりで、頭が冴えていてこの日はよく眠れなかった。

明日は早起きして、世界遺産の都市マラッカに向かう。