踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出た髭の人が世界中放浪した果てに結局海外大学院留学せずに帰国→家族でベトナム ハノイ移住→その後ドイツで大学院卒業→現在はカンボジアでのらくら。

ラルンガルゴンパ①

 

9月20日

 
 
どうやらあなたたちは月に行ったようだ。私たちは信じないけれどそれは真実なのでしょう。それと同じように、私達がこの一生の中で『悟り』をひらくことができるというのもまた真実なのです。
 
 
これはWade Davisという人類学者がTEDの中で紹介した、あるチベット僧の言葉だ。
 
これは現在の西洋文明とはまったく違うところに向けて発展した文化が、劣っているとか優れているとか、そういうものではないということがよく表されている言葉だと思う。
 
 
この日訪れたラルンガルゴンパという場所は、僧侶たちが暮らす町。(というか僧院。)
そもそもここの写真をみたときにその不思議な秘境感に惹きつけられて「チベットに行きたい!」と強く思うようになり、かねてより一緒にチベットに行きたいといっていたしんごともタイミングがあったため、急遽の二人旅となったのだった。
 
ここではチベット仏教の中でもニンマ派の人達が修行しているといわれている。
僕がここに来るまでにざっと読んだ「チベットの先生」という本にはニンマ派というのは特に瞑想修行に重きを置いていて、遥かな昔から、人間の心のあり方、動き、を瞑想修行の中で見つめてきた人達なんだそうだ。本には様々な修行の段階も記されていてなかなか興味深いので興味のある人は是非一読してほしい。
 
 
 
さて、朝1番に、明日のバスのチケットを先に買いにバスターミナルへいく。
僕と過ぎたはマルカムという町へ。

カズさんたちは成都へ。f:id:nacarthur:20150927171940j:plain

 
実は成都へのバスは16時間の悪路と言われており、ほとんどトイレ休憩もないとの噂だった。これは頻尿会のプリンスを相棒にしているということを差し置いても、ぼくもオムツを装着しなくてはならない流れになる。
 
そういうわけでチキンな2人は成都の途中のマルカムで一泊する予定にしていたのだった。
 

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なんとセルタの街中にはハンバーガー屋さんがある!エビバーガーもチキンバーガーも味はなかなか悪くなかった。

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中国の飲食店には食品安全の基準がマークで貼られている。大抵の場合Cなのではがされていることが多いようだけどここはB!いちいちこういう評価があるのもおもしろおもしろい。
 

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「実はこの旅にドローンを持ってきていて!」
バーガーを食べているとき、カズさんからの衝撃の告白。朝から確かになんでこんなに大きな荷物持ってるんだろうとはおもってはいたのだが、まさかドローンだとは( ゚д゚)!
 

バックパッカーならぬドローン・パッカーということで旅をする2人は、シンガポールのマリーナベイサンライズからドローンを飛ばして撮った動画を見せてくれた。これがもう、ほんと感動するくらい美しい動画で、すげーの!

「日本では色々と問題にされたりもしてるけど、こういう動画を個人でとれる時代になったんですよね。」

どんなものも悪い面ばっかりくろーずクローズアップされたら、面白いところみえへんなってまうもんなあ、としんごはいった。

「つまりこれをラルンガルゴンパで飛ばすの?!」

僕たちはワクワクした!あの写真でも心を動かされた光景が、ドローンで撮る動画にうつるなんて!

「すごいなー!たぶんラルンガルゴンパでドローンを飛ばすのは人類史上初かもしれん!」

もちろん、僕の心の中にはそんな宗教的な空気の強いところでドローンをとばすことが受け入れられるだろうか?という問いはあった。むしろそれはやっていいことなんだろうか?とも思っていた。
 
でも、その光景にドローンが飛んでいるのを考えるだけでワクワクするし、というかドローン見たことないし、それを初めてみるのがラルンガルゴンパだなんてなんてスペシャルな!
 
俄然興奮してきた僕たちは乗り合いタクシーを見つけてラルンガルゴンパに向かった。
 

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セルタ→ラルンガルゴンパには1時間もかからないくらいでつく。
途中観光バスが何台も泊まっていた。
何年か前のwebの情報ではラルンガルゴンパは外国人立ち入り禁止の秘境だったのだけど、いまやだんだんと観光地化が進んでいっているみたいだ。
 

「ラルンガルゴンパやーー!ついに来たぞー!」

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その赤い建物がずっと続く街並みは流石に圧巻だった!自然に口角が上がってしまうくらいワクワクする。

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僕らは高いところを目指して登っていった。僧侶の人達の生活を垣間見ながら住居の横を抜けて登っていく。

途中、年配の尼さんが座っていてタシデレと挨拶をすると町を指差して「いい眺めだろうー」というようなことをいった。カメラを向けるのは嫌がっていたけれど、物腰の柔らかい優しそうな尼さんがだった。

 

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高台から見下ろす町は絶景。

遠くのお寺ではお寺の周りを僧侶たちがぐるぐる歩いてまわっているのが見える。いままで見たことのないくらい大きなマニ車が、止まることなくまわっているのも見える。

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僕たちはテンション上がりっ放しのまま歩いた。

「カズさん!ドローンやりましょう」

僕は言った。

「飛ばすなら下のほうからがいいんで、あの広場からにしましょうか」

カズさんは町の中心に見える広場を指差した。
僕らはその広場を目指して町を歩いた。
ラルンガルゴンパは写真を撮っているのを公安にみつかるとカメラを没収されるとか、そんな噂があったのだけど、この日は特になにもなかった。
(ただ僧侶の人達は写真を嫌がることが多いので、あんまりバシバシ撮るわけにはいかないのだけど)
 
歩いてみたラルンガルゴンパの町は、思っていたより厳かな雰囲気ではなかったように思う。

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若い坊さん達はじゃれあったりしているし、道で経典や本を売っているのに群がって「これめっちゃよくない?!」と友達同士言い合っている姿は普通の若者達だ。なんというかにこやかな人が多くて僕は少し安心していた。
 
 
「さー!やりますか!」
 
晴れてるいまがチャンス!とカズさんとマリさんは広場でたぶんここでは人類初のドローン飛行を準備し始めた。
 
僕としんごは映像に入らないように広場の端にすわってどういうことが起こるのか、ワクワクしながら、見守っていた。