踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出た髭の人が世界中放浪した果てに結局海外大学院留学せずに帰国→家族でベトナム ハノイ移住→その後ドイツで大学院卒業→現在はカンボジアでのらくら。

東チベット〜色達〜

9月19日
 
今日向かうセルタの町は僕にとって特別思い入れのある街だった。
というのも、インドのラダックでHimalayan dental missionで一緒に活動したラダック人のTumdupの家族が遠い昔にこのセルタからやって来たと聞いていたからだ。
 
「5世代くらい前にセルタから移ってきたって聞いてる。セルタって、金の馬像が建っている、綺麗な町だって聞いたわ」
僕はTumdupに写真をとって送ると約束していたのだった。
 
朝、乗り合いタクシーでセルタ(色達)へいこうとしていると、宿の前で声をかけられた。
「日本人の方ですか?」

 

ここで、カズさんとマリさんに出会えたことで僕らのセルタ、ラルンガルゴンパの旅を本当に深いものにしたと思う。2人は夫婦でハネムーンに世界一周している途中だった。
 
朝ごはんに肉まんを買い込み、乗り合いバンに乗り込んだ。
昨日のように人が集まるまで長く待つこともなく、スムーズに車は色達にむかった。
 

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途中一緒だった坊さんがめっちゃエキセントリックで、カメラを向けると草原で袈裟を翻してポーズをとってくれた。この坊さん、カズさんのとなりに座っていたんだけどなんと勝手にカズさんのポテチの袋を空けて食べ始めたりしていたらしい´д` ; ポテチみたいなもんに執着すんな!っていう尊い教えなんすかね!
 
ちなみに東チベットのお坊さんたちはスマホ持ってます。なんならipadで経典読んじゃったりするんだよね。デジタル化の波からは、マサイ族もチベット人も逃れられないのです。
 
 
5,6時間かけて着いたセルタの町は曇天模様。
今にも雨が降り出しそうだった。
車をおりて、すぐに僕の目に飛び込んできたものがあった。
「金の馬や!ほんまに金の馬の像がある!」
 

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広場の真ん中には紛れもなく金色に輝く馬の像があった。これ修復されつつも何世代も前からここにあるかどうかはわからないが、とにかく、Tumdupの故郷は間違いなくこのセルタで間違いなさそうだ!
 
とりあえず宿を決めるため歩く。カズさんたちがwifiの早い宿の情報をもっていて、僕らはそこへ向かった。広場の馬の像に向かって左手の通りを進んですぐ右手の三階にある宿でホットシャワーもついてて安宿としては申し分ない。

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家族経営みたいでリビングみたいなところでみんな寛いでいた。
しんごとそこに混じって、おじさんが回していたマニぐるまを回させてもらう。これがなかなか難しくて、勢いよく回したからといって回せるもんでもない。手の内で揺らすような感じで優しく回すと上手くまわる。とにかくいつでもチベットの人たちはこれを回している。

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小学生くらいの子どもが宿題をしていた。その内容がチベット語だったのを見て僕は安心した。町中で子供たちが話しているのが中国語なのでもうチベット語は教育されていないのかと思っていたからだ。地域によるのか、どうなのかわからないが、少なくとも子供達にはまだ学校教育の中で(もちろんこのテキストが学校のテキストだという根拠は何もないが)チベット語はまだ伝えられているのかもしれない。

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僕たちはカズさんたちと一緒に宿のすぐ下のチベット料理屋で昼飯を食べた。

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カズさんとマリさんはチベットに詳しくて、ほとんど予備知識のなかった僕らは2人から色々な事を教わった。
中国政府がたてたパンチェンラマんの写真を飾るお寺ではダライ・ラマの写真を飾れないこと。ダライ・ラマに反対する勢力があって、その派閥が世界中にお寺を持っていたりすること。《調べること
 
ちなみにしんごがコーラのでかいのを注文すると見たことないくらいでかいコーラが出てきて、みんなで苦笑しながらのんだ(´Д` )3Lくらいあったのではなかろうか。
 
 
ご飯を食べている間に晴れてきた。
カズさん達とは晩御飯を一緒に食べる約束をしてぼくとしんごは街をぶらつく事にした。セルタの情報は地図も何もなかったので適当に町をぶらつく。
僕はTumdupに見せる写真を撮ることを意識しながら町を歩いた。

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セルタの町は思ってたより断然都会だ。町の中心部は綺麗に舗装され、新しい建物やお寺がバンバン建っている。
 
この辺りで人々が被っている帽子がめっちゃおしゃれ。頭の後ろにマークがくる。
 
街の外れの丘から町を見下ろすと金ピカに光っているお寺が見えて、そこを目指すことに。この建物、お寺にみえたのだけど、ちがった(._.)

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中に入ってみるとそこにはセルタの町の今昔の写真が飾られていた。
 
「これは…共産党が町を開発したおかげでこーんなにセルタの町が豊かになりましたよー!っていうことをアピールする施設やな!」
 
セルタ県ができて60年を記念して作られたらしいこの建物。
もうほんとにものすごい発展アピール!
 

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遊牧民の皆さんの収入がー!こーんなにグーンと、アップしちゃいましたー!
 

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固定資産投資額だってー!こーんなにぐーんぐん増えちゃいましたー!!
 
もちろん、皆さんの文化だってー!まもってますよおお!
 
 
すごいっす。(-_-)マジハンパねえっす。
また小さい子供たちがこの施設で遊んでたりするんだよねー。なんつーかもうね。
 
ただ、この町を歩いてると普通の旅行者としては「綺麗な町だなあ」とか思ってしまうんやよね。そんで人々も、近代的な生活を望んでいたりすると思うねんなー。
中国政府が主導でいま中国内地の開発が進められているらしいのだけど、僕らが「独特の文化が失われていくこと」を嘆いても、変化は必然的に起こっていったりする。
 

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ここや、ルーフォーの町の開発の仕方を見ていると中国政府はこの東チベット文化を「根絶やしにしようとしている」とは思えない。むしろ強力な観光資源として、その伝統的な建物の作り方を模してホテルを建てたり、インフラを整備しているようにおもう。道には何メートルかおきにゴミ箱もあり、清掃員の人がどの街にもいる。
中国内地の町が汚いなんてイメージは、いまや過去の話になりつつある。
 
それが、チベット自治区に対する行いへの国際的な批判から学んで形を変えてチベット文化を利用、支配しようとしているのか(というかこの地域にすむ人々は自治区にすすむ人たちと違って自国民だからか)、根絶やしにしたいのはチベットの人々の心の真ん中であるラサとダライ・ラマへの信仰なのか。
どちらにしても第二次世界対戦後のアメリカの日本に行った政策と通じるものがある。
 
というか中国はなぜそこまでしてチベット自治区を手に入れたいのか。
僕はまだまだ勉強がたらない。
 
 
僕らはどんどん町の外れの方に歩いて行った。
 

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ひとつのおおきなストゥーパが目に入ってきた。地元の人たちが数珠を片手にストゥーパの周りを何周も周っている。
 

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中に入ると、そこにはものすごく昔からあるのであろうマニ車が並んでいた。
どのくらい昔からそこにあるのだろう。窓から入ってくる光が、静謐というのか、容易には動けないような空気を作り出している。
ぼくはしばらくそこにたって、人々がお経を唱えながら何周も回るのを見ていた。

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ぼくが生まれるより前からずっとこの人たちは毎日ここでマニ車を回してきたのかもしれない。標高4000mにちかいこの町で人々が今でもチベット仏教の教えを守って生きていること。間違いなくこれはこの世界の貴重な彩りの一つだ。
 

 

 

ストゥーパからもう少し歩くと、町の外れに旧市街のような場所がある。
この場所にはいつからあるのかわからないおおきなルンタがある。
 
ルンタは、タルチョーとも呼ばれて風に旗が靡くたびにお経を読んだことになるというチベット文化の五色の旗。
 
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僕としんごは只々、その場に立ち尽くしてしまった。
青空をつくようにそびえ立つルンタ。朽ち果てて、倒れたいくつものそれが辺りに横たわっている。
側には新しい金ピカのお寺が建造中で、人々はそのお寺に自動マニ車を設置する仕事をしている。同じ道の反対側にはただ朽ちるのを待つようにたつ、ルンタがある。
近くのマニ車を子供たちが回していて、鈴の音がまたチリンチリンと音をたてている。
風の音、鈴の音。他には何も聞こえないようで、その「場」の凄みに僕らは圧倒されていた。
 
「これは、『祈り』そのものやな」
ぼくがそういうとしんごも、まさに自分もそう思ってた、といった。
 
1000年続く祈りが具現化すればこんな感じなのかしれない。
 

 

あたりの町を歩く。家々の作りは伝統的で、町の中心地みたいに近代的に作り変えられてはいない。ここが旧市街なのか、貧しい人たちが住んでいるのか、僕たちには判断がつかなかったが、人々は優しかった。
 
タシデレ!と挨拶すると、みんなすごく笑顔でタシデレ!と返してくれて、両手で手を握って歓迎してくれる人たちもいる。
 
 
町に帰る途中に雨に降られた。山の天気は変わりやすい。遠くの方に雨雲が見えたら、しばらくしたらその雲が流れてきて雨がふる。しばらく雨宿りしていればやむのだけど。
 
晩御飯は宿向かいのチベットの料理屋へいった。

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牛肉の炒め物がジャーキーかよ!ってくらいかたい!(´Д` ) でもこれが食べてると癖になってくるんですよ。
あとポテトチップスみたいなのと、ピリ辛のチャイニーズレタス?の炒め物、そんでトマトと卵のスープ!!どれもうまいっ!幸せ!
 
杉田はこの日も、中国変わった飲み物シリーズに挑戦。
生搾!シリーズの玉米(トウモロコシ)ジュースを華麗にセレクト!

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「んー!あー!冷たいコーンスープ!!」
また必死に密封された蓋をあけてやっとくちをつけたしんご。
またしても生搾!美女の美しさをもってしても贖いきれない微妙さっ!
 
 
 
明日はついに、この旅目的地、ラルンガルゴンパへ!