ストックホルム⑤ 岡島かな多ちゃんとの対話
あれは2012年の幕開けだっただろうか。

FBに一つのイベントのお知らせが届いた。
「元旦、ラピュタを探す冒険に出ましょう」
ラピュタを探す冒険と名付けられたこのイベントは僕の友達が主催していて、簡単にいうと元旦から栃木にスカイダイビングしにいく、という企画だった。
僕がかな多ちゃんと出会ったのはその時だった。その日僕らは一緒に上空4000mから空を飛び、関東平野の向こう側にそびえる富士山をみた。
岡島かな多、彼女は現代のJpopシーンを動かす、作詞家でありアーティスト。安室奈美恵、Crystalkay、和田アキ子、Hey!Say! JUMP、日本人なら誰でも知っているような第一線のアーティスト達に楽曲を提供し続けている女の子。
チェコでウォーホルを見て以来、僕の中ではpopがテーマとしてあったので、是非話を聞いてみたかった人だった。
東チベットを一緒に旅した杉田も「日常➕POP」を自分の表現を説明するのに掲げているがその実POPってなにかが僕にはわからないでいた。
Sulssenの駅前で待ち合わせた僕たちは、案外すんなり会うことかできた。
少し歩いて、いい雰囲気のお店を見つけて、僕らはビールから始めた。かな多ちゃんは帰国子女なので英語も抜群に上手い。
現在スウェーデンでアーティストとして仕事をしているかな多ちゃん。彼女の楽曲を色々と聞いていると、その詞の幅広さに驚く。深みのあるものから、わかりやすいものまで様々だ。
「演じている、感覚に近いかもしれないなー。なりきってるっていうか」
彼女はそんな風に曲によって詞を書き分けることを表現した。その曲がどんな言葉を読んでいるのか、が大切らしい。
音楽の素養のないぼくは只々感心するばかりだった。
かな多ちゃんは音楽のことをたくさん語ってくれた。
「自分の書いた歌詞が30万人の人達に聞いて頂けてるって思うと、もう曲聞いて泣けてきちゃう」
「1万人の前で歌うと自分の上がり下がりをうまくコントロールできないくらい上がってしまう。第一線でやってるアーティスト達の精神力はすごいと思うよ。10万人分背負ってるんだもん!ある意味鈍感力と言い換えてもいいかもしれないけど」
第一線で頑張ってる、そして楽しんでいる人の話には力があって僕は圧倒されていた。
会話ははずんで、旅の話や仕事の話をしている間に電車の時間が来てしまった。

短い時間だったんだけど、熱量のある会話はほんとに為になる。夜、頭が冴えて寝付けなかった。
僕がこの先の道がどこに繋がるかわからないことへの不安を口にした時のかな多ちゃんの言葉が耳に残っている。
「そんなの、やりたきゃやりゃいいじゃん!どこに繋がってるのかなんてみみっちいことだよ!」
POPを生み出す人間の凄さを感じた夜。
目の前のことを積み重ねるしかない、そう実感している彼女の言葉は、強かった。