踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出たナッカーサーが世界中放浪した果てにイギリスの大学院に留学するのかどうか、という毎日を綴るブログ。可能性迷子の毎日をお届けします。

タージマハル。人間の『聖』と『俗』。

9月1日。
朝6:00の電車でアーグラーにむかう。

なんといってもアーグラーはあのタージマハルがある町。インドといえばカレーとタージマハル、それくらい有名な建物。

8:00過ぎにはつく。
一泊するのも勿体無いかな、と
この日、同じ日の夜行列車で、次の町バラナシにいくことになっていたので夜まで観光するのにどこかにバックパックを置いておく必要があった。

15kgの荷物を抱えながら観光はさすがに厳しい。

なので事前にcouchsurfingでタージマハル付近で宿を経営してる人をさがして「荷物だけ置かせてくれませんか?必要なら費用払うので」と聞いてみたのだけど、返事は来たもののあんまり反応はよくない(そりゃそうだ。)

まあそれでも押しかけていっちゃえ(^ω^)とその宿の住所は一応ひかえておいた。アーグラーについてその宿まで連れてってくれと頼んだトゥクトゥクのおっちゃんがいい人そうだったので、とりあえず1日観光案内をお願いしてみる。


昨日騙されかけといて、「いい人そう」ってなんやねんって感じなのだけど、まあおっちゃんが昔に日本人とか他の国の旅行者が書いた「この人オススメですよ!」みたいなことを書いてるノートを見せてきて、もう他さがすのも面倒だし、自分の運を信じよう、と。


750ルピーと少し高めではあったものの。本人も、「びた一文他には請求しない!」というし
まあ他の人々も「最後まで正直にやってくれた」とかいてあるもんだから、見どころ大体まわる約束で1日おっちゃんを雇った。

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「俺のモットーは正直さだ!Honesty!!」
そう豪語するおっちゃんを僕はどこか怪しみながらも、俺も人間は正直さと誠実さが大切だと思うぜ、と応えておいた。


「荷物を置くだけなら知り合いの宿に置いておけばいい!みんなそうしてる!」
とおっちゃんがいう。

マジかよー、怪しいなー( ゚д゚)と思いながらもその宿に連れてってもらう。

そしてバックパックを置き、タージマハルに持ち込めない電子機器類その他を置き、帰ってきたときになかったらどうしよ!と思いながらも僕はおっちゃんと観光へ向かった。


おっちゃんはサブーという名前。

サブーはとりあえずタージマハルへ連れてってくれた。


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タージマハルはすごい。
ほんまにすごい。これが全部大理石でできてて、かつイギリス統治前は金や宝石が散りばめられていたなんて、もうほんま狂気の沙汰だ。

思っていた以上の精巧さに心を打たれて歩き回ったあとしばらく僕はタージマハルを木陰から眺めていた。

ガイドブックに目を通しているとタージマハルをつくったムガール王朝は中央アジアからやってきたティムール一族の末裔だと知る。6年前行ったウズベキスタンで、ティムールという王様の凄さをひしひしと感じたけれども
そうかその血筋がインドでも王朝を作っていたのか、と歴史のロマンに浸っていた。


「お前はいいやつだから、特別に他のところにもつれてってやる」とサブーは僕をタージマハルの裏側に連れてってくれた。誰にでもそんなこといってるんだろうなー、と思いながらも僕はサブーに導かれてかつてタージマハルと川を挟んで対岸に建てられるはずだった黒いタージマハルの建設地にいった。

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そこはいま公園になっている。
これが綺麗な庭園で、ここからのタージマハルもすごく印象深いものだった。


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写真を撮ってくれたのはいいんだけど、あれやな!サブーは写真が下手すぎるな!もうちょっとなんかこうなあ(°_°)

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名前は忘れたけどこの遺跡も美しかった。
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壁の装飾がかわいい。

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それからアーグラー城をまわり、昼ごはんを食べたあと、サブーがマーケットに行こうといいだした。



でたぜー!土産物屋にいこう攻撃( ゚д゚)!
「バラナシではその服装では寺院に入れないぞ。インド風の服装でなきゃだめだ」と聞いたこともないことをいう。
サブーよ、お前もか…。

なんにも買わんから時間の無駄やで(^ω^)というものの

「いいか、この町でどういうものが作られているのか是非お前に知っておいてほしいんだ。いつかお前が嫁さんと来るときに…いい下見になると思わないか?ムガール王朝の技を受け継いだ職人の…うんたらかんたら」と語るサブーを制しきれず、何軒か周ることになった。

夜行列車の時間までの暇つぶしにいいか、と僕はつれられるがまま土産物屋にいった。

一軒目、カシミール産のスカーフを売る店にいく。手触りとかはすごくいいんだけど、高い。日本で買うよりはもちろん断然安いんだけどこれから4月まで旅するのに、買って持ち物が増えるのもあれだ。ものっすごいちゃんと説明してくれるもんだから、ほんと断りにくくなっちゃうんだけど、ここはすんなりスルーした。

二軒目。
宝石屋さん。
興味ねえー(°_°)と思って入りるも説明を受けているうちに、なになに、宝石も面白いじゃないか! と聞き入ってしまう。

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「アーグラーでしかとれない石がある。それがこの!ブラックスターサファイアだ!」

でーん。

安物のRPGのアイテムででてきそうな名前やな!


でもこの石はこう、動かすと星型の光が黒の石の中で光ってなかなか綺麗。

かの黒いタージマハルもこの石で作られる予定だった…!と熱くなる宝石屋の店主がどうしてま売りたいらしくどんどん値を下げるんだけど、いらね(^ω^)ってことでここもパス。

三軒目
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タージマハルをつくった職人の業を受け継いだ男たちのつくる大理石の彫刻たち!お皿!テーブル!!
技術は素晴らしいけど、持ち運べん!
買えん!


サブーは、なんだよー、ほんとになんにも買わねーのかよーという顔をしていた。宝石屋で西洋人が同じように連れられて来てるのをみたので、たぶん1日観光をたのんだりすると大抵の場合こういう流れになるんだろう。


「マージン貰えなくて残念だったなー!」と僕がいうと
「何を!俺は金なんてあいつらから貰っちゃいない!祭の時にお返しに食べ物を振舞ってくれたりだとか、そういうものなんだ!」とサブー。
僕はマージンを貰うのは別に商売の形として悪くないと思うんだけどやたらとその辺は否定していた。

それは本当にそういうものなのかも知れない。


全部終わって宿に帰ると荷物はちゃんとあった。誰も簡単には信じられなくて疑心暗鬼になっているため、ほっとする。


まだまだ列車の時間には早かったけれど、やることも無いので駅に送ってもらう。

ノートにオススメの文章をかこうか?と聞くと、ノートはいっぱいだからいい、と言われる( ゚д゚)めっちゃ余ってるページあったやんけ!

何か警戒されているのな!

こいつなんかいらんこと書くぞ!と。


去り際、約束のお金を払う。
うんうん、とサブーは頷いてこういった。




「チップは?」

( ゚д゚)

お前の正直さはどこいったんじゃーい
他にお金をねだったりはしない!っていうてたやないかーい!

なんでやねん!というと
ええー、だってーと子どもみたいなごねかたをしだした。

僕はサブーを諭してわかれ、待合室で列車を待った。




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サブーは、すごくいい奴だと思う。

と思う僕の感情はすごく主観的で世の中にはいい奴も悪いやつもおらず、1人の人間の中に「聖」と「俗」がいり混じって存在しているというのが本当のところなのかもしれない。

どんな人間も「欲」をもっていて、多かれ少なかれ、また角度は違っても、そういう部分が頭を見せる瞬間がある。もちろん自分も。

皆そういう「俗」な自分を受け入れたり、受け入れられなかったりして悩んだりしながら、生きているんだろう。

そしてなんだかわからない「正しさ」や「モラル」を「宗教」という枠組みの中に見たり見なかったりする。

もちろんつきつめればそんな価値観なんて全部人間が作り出したもので、本当はなんにも「ない」のだろうけど、人間としていきていく以上どうしてもその辺りのことにはとらわれてしまう。


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この時読み終えた仏教の本に書かれていて、ピンと来たところをここに書き残しておこうと思う。

「人間は『世界の創造に遅れて到着してきた』。そういう実感こそが『宗教性』の萌芽であること。ルールの決まったゲームの中にぽいっと放り込まれたようなもの。」

「宗教とは『思い通りいかない=苦』であるこの世界を、自分自身を目覚めさせていくことによって受け止めていく体系ではないでしょうか。つまり『不条理な苦を引き受けていく』システム、といった一面があると思います」

「『欲求』とは『本来あるはずのものが欠如した状態』。これに対して『欲望』とは、欠落があることは確かなのだが、何をもってその欠落をうめることができるのか、そもそも自分が何を求めているのかを言うことができない。
『いまだ存在しないもの』の探求、それが欲望です。 
愛する人を抱きしめているときに、もし愛撫が『欠如』であるなら、ぎうと抱きしめたことによって欠如は満たされ、ガソリンを満タンにしたときのように『はい、ありがとうございました。』と言って、ほいほいとどこかに出かけてしまう、、ということが可能なはずです。でも、実際にはそんなことって起こりませんよね。」

こういった言葉を並べると、多くの日本人は宗教アレルギーで、「宗教=怪しいもの」と思っているので、「踊る髭=怪しい人」と思われがちだが、僕はただ、この世に生きて『人間を少しでも理解したい』と思う人間なわけで、旅をしながらやはり色々な人のことを考えたりしているわけで。

この世界や人間を理解するのに『宗教』という見方は避けては通れないものだと思っている。

インドという国では特に。ここではそれを考えずに、人々を、この国を考えることはできないだろう。


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バラナシ行きの列車は時間通りやって来た。隣のコンパートメントから深夜、女の子達が歌う歌が聞こえる。同席だったインド人一家に家族の風景を見る。

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カオスな車両を引っ張って、夜行列車はガンジス川のまちバラナシへ。


『いまだ存在しないもの』への探求、こそが欲望と呼ばれるものならば、なんとまあ自分は欲望の深い人間なのだろうと、そんなことを思いながら眠りについた。