

登ってくる朝日がめちゃくちゃ綺麗で僕らは夢中でシャッターを切った。その美しさはなかなかカメラに収めきれないけれど、モロッコの旅の最後まで綺麗に演出してくれてよかったと思う。
カサブランカ一歩手前の駅で列車が止まっており、そこからはタクシーで向かうことになった。ふたりで他にも空港に向かう人がいるはずだとシェアできる乗客を探し、イラクから来たというマイペースなジャーナリスト風のおじさんとタクシーをシェアした。
空港までは1時間ほどだったかと思う。
おじさんは空港に着くなり
「俺のフライトはもうすぐだ…。だが、俺にはタバコが必要なんだ…」とタバコをふかし始めた。国際線のフライトまで1時間半くらいしかないのに、そんなことにはペースを乱されずにタバコを吸う。そうか、これがハードボイルドってやつか、と僕は思った。おじさんのグラサンの奥のギラつきを僕は忘れない。
まりもは昼の飛行機だったので少し時間を潰して別れた。
「必ず生きて帰ってくるのだ」
自分が帰る場所があるということが嬉しい。
僕のフライトまでは6時間くらいあったのでブログの文章を書いたりして過ごしていた。最近もう時間の感覚がおかしくて6時間なんて一瞬だ。
フライトは「サウジアラビア・エアー」だった。聞いたこともない航空会社だったのだけど、チェックインカウンターの対応からお姉さんがとても優しくて好印象だ。
カサブランカ→ジッダは3時間くらい。
サウジアラビア・エアーは期待を5倍くらい上回るサービスの良さで、シートもふかふか、わたしてくれるアメニティの中には新しい靴下まで入ってた。(実際買おうと思っていたので本当に助かった。)しかも隣に誰もいない席だったので横になってぐっすり眠れた。
ついてる!僕は眠りながらそう思っていた。

さて、サウジアラビア、ジッダに着いた。
ここはトランジットだけで3時間の滞在なので、トランジットゾーンを通ってサクッとDUTY FREEを抜け、搭乗ゲートへ向かう。
僕が見た時は各フライトの搭乗ゲートを映すモニターには何も表示されておらず、僕はまたなんやかんやしながら時間を潰していたのだった。
そのうちボーディングタイムの時間が来た。
しかし、一向に搭乗ゲートは表示されない。おかしいな、と僕は近くの空港の係りの人に聞こうとしたのだが、話しかけたその人は職員ではなく、代わりに隣にいたフィリピン人が「お前もゲート表示を待ってるのか?俺もなんだよ、どうなってんだろうな?」と応えてくれた。
そっか他にも待ってる人がいるならきっと遅れてるんだろう、と僕は安心してまた椅子に座って時間を潰し始めた。
しばらくして、飛行機が跳ぶ時間ごろになってやっぱり何もゲートが表示されないので僕とフィリピン人のおっちゃんはウロウロしながらどうなってるのか聞き回ってみた。
「お?この便ならもう飛んだぜ?」
( ゚д゚)
とんだ!?
あの時のフィリピン人のおっちゃんの顔はほんとこの顔文字( ゚д゚)そのもので、一流俳優もびっくりな、宿敵の正体が実は本当の父親だった、みたいな、天地を貫く驚きの表情だった。
流石の僕も飛んだのかよ!( ゚д゚)っと表情を同じくして、でも画面には搭乗口なにも表示されなかったじゃないかー!ばかー!あほー!まぬけー!と文句をいって見たけれど、まあそれで飛行機がカムムバックしてくれるわけでもない。
なんとも言えない脱力感の中、「俺たちは何回もファイナルコールかけて呼んだよ!モニターはぶっ壊れてんだよ!」と主張するサウジアラビア人と戦う僕とフィリピン人のおっちゃん。
髭の運命やいかに。