9月17日②
「Hello?」
電波はあまり良くないけれど電話の主ははっきりとした英語で話した。
「やあ、君は日本人なんだって?僕はラサに住んでいるチベット人です。いまどこにいるの?」
「いまはルーフォーって町にいて、ここからガンゼに向かうよ」
「そうか、ラサには来ないのかい。」
「ラサは…今回はいけないかなあ。遠いし、許可証とかいるし。」
もう5年か10年したらチベットは完全になくなって、中国になってしまうだろう。
何日か前にチベットは人のおじさんから聞いた言葉が頭をよぎっていた。
「そうかあ。でもいつでもウェルカムだよ。また機会があったらラサに来てくれ!」
君と僕の友達の写真をとって僕に送ってくれよな、
そういって電話の主は電話を切った。
女の子は電話を受け取ると電話の主とは話すことなく通話を切った。
たぶん僕らが外国人だから英語が通じる人と繋いでくれたんやよ、とShingo。

そのあと僕らは写真をとって、集落の外壁を回って別れた。
なんでもんない、特別なものはなにもない時間だったけれど、僕らはなんだか満たされた気分で街に帰ってきた。
街の中心部で、実はさっき歩いた時に少し気になっていたものがあった。
路傍でチベット人女性が売っていた「石」なのだけど、ちょっと覗き込んで見てみたとき、なんとなくその紅い色が気になっていたのだった。
帰り道によってみるとそこには人だかりが出来ていた。
沢山の人がその紅い石を手にとっては光に当ててその色に見とれていた。
僕は普段そんなに石や、アクセサリーなんかに惹かれたりはしないのだけど、どういうわけだかこの時はこの紅い石に惹かれてしまった。
紅い琥珀、のようなその石はShingoが聞き取れた範囲では「ラサの不思議な石」というような意味の名前の石のようだった。グラム10元で売られていて、どうやら僕らだけがボラれているわけではなく集まっている人々にも同じ値段を言っているようだ。
「そんなに惹かれるなら、俺が半分出してやるよ!誕生日の祝いにな!」
僕が珍しく物に惹かれているのを見てShingoがいった。
そう、明日は僕の30歳の誕生日なのだ。20代の最後の日にこういう物に出会えるのも何かの縁かも知れない。
結局僕はこの石のブレスレットを買った。
この日は終始、「女子か!」と自分で突っ込みたくなるほど、腕につけたそれに僕は終始見とれていた。
結局、この石はその後のチベットの旅でも見ることはなかった。チベット人の人が見ると「どこで手に入れたの?」と聞かれたりするのでチベットではなにか特別な石なのかもしれない。(ちなみに成都では2.5倍の値段で売られていた・・)
宿でShingoが大阪のシェアハウス仲間からのバースデイメッセージ動画を見せてくれた。
「髭!お前の30歳から40歳までは、10年あるぜ!!」
紙芝居屋さんをしている友達のこの素敵で意味不明なメッセージにもう恋に落ちる寸前でした。この10年を大切に生きていきたいと思います。シェアハウスのみんな
本当にありがとうございました。
本当にありがとうございました。
ビールを片手にShingoと色々な話をした。
いつだって迷ったり、この道でいいのか悩んだりするけれど、信頼して話が出来る友人がいることは何物にも変えがたいことだと思う。
この日彼は高山病を恐れてビールの代わりに「生搾!椰子汁」を飲んでいた。
異常に固く密封された中国のこの飲み物は思い出に残るほど開けにくく、奮闘の結果Shingoは爪を持って行かれていた。あいたた!
パッケージの美女で贖いきれない手強さ(味も含む( ^ω^ ))は20代最後に日の消せない記憶になった。(生搾、に美女を起用するセンスは大好きだ。)
明日は、この地方でも歴史的、宗教的に重要だといわれる都市、ガンゼへむかう!