踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出た髭の人が世界中放浪した果てに結局海外大学院留学せずに帰国→家族でベトナム ハノイ移住→その後ドイツで大学院卒業→現在はカンボジアでのらくら。

Thiksay monastery。カースト制度の現実。

8月25日

「髭、何時から診療する?明日からは君がボスだ」
イギリスの歯科学生のJackが冗談ぽくいう。

今日からResident DentistのMarryがネパールに出張、ケニア人歯科医師のZharaが明日帰国の為今日はOFF。

なのでここから数日診療所は歯科医師は僕ひとり、そしてイギリスからの2人の歯科学生JackとAmeliaの3人体制になる。

10時から16時まで診療。

診療所での治療は始めてなのでJackに設備のことを大体教えてもらう。

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オートクレーブ、超音波洗浄器。

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各種機材。

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日本の歯科機材もある。

JackとAmeliaはすごく真面目で患者さんがいないときでも抜いた歯を使って練習したりしている。
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この日はそんなに忙しくなく、併設されているRamdon Schoolの生徒達が主な患者さんだった。

4時ごろソーラーパネルの機材を屋上にあげるのを手伝う。

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いやいやいやいや!手ではあげられへんやろー!という重さのやつをなんとかしようとするもやはり無理で、結局ロープで釣り上げた。

ラダックはソーラーエネルギーを使った発電が盛んで、それで電力をまかなっているところが多い。普通の家庭では電気を使うのは夜だけで、昼は宿とかでも電気が通っていないことが多い。



1日OFFだったZharaと現地スタッフのTundupと合流してThiksay monastery(僧院)へ。
車で30分くらいのところにある。

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リトル ポタラと呼ばれているらしく。
佇まいはチベットのラサのポタラ宮みたい!

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登っていくと、修行僧たちがくらしている僧院を見学できる。

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この部屋の空気は、何百年も仏教の儀式に使われてきた空気が満ちていて、心が打たれるものがあった。

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積み重ねられた時の重みみたいなものを持つ空間だった。


修行僧はシャイだけど写真には応えてくれる。僕はこういうところではおとなしくしているほうなのだけど、Zharaは思いっきりツーリスト感満載で

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「ちょ!僧侶と写真写真!」
「髭!ジャンプして写真撮るわよ!」
とはしゃいで回っていた。

静かなここの空気を壊すようなことはしたくないなー、と思いながらも僧院内でジャンプ写真をとる自分。

この流されっぷり「日本人」や…(°_°)

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屋上からの景色も素晴らしい。



帰り道。
なんとなく自分たち自身の話になった。
暗くなっていく中、今までやこれからをはなした。

Tundupは「誰にも話したことがないことだけれど」と話しはじめた。

それはカースト制度にまつわる差別の実態だった。ここには詳しくは書けないけれど、茶色の瞳でまっすぐに語るTの言葉ひとつひとつを忘れられない。
インド社会の現実。本当に「自然に」存在する差別。

「だから強くなりたい。自立した大人になって、私もたくさん旅をしたい。」

21歳。インドのハイデラバードで目の検査をする医療スタッフの資格をとったTはいまRamdon clinicの眼科で働いていて、歯科の手伝いもしてくれている。

かつて僕が彼女と同い年の頃に30歳くらいの旅人達に影響を受けたように。自由と冒険心を忘れない精神を教わったように。

なんというかこうやって話す中で旅人達の精神は受け継がれていくのかなと思う。

社会の形や、文化の鎖に縛られず、自分の道を、彷徨いながら、またさまようことを楽しみながら、先にあるゴールなんてどうでもいいくらい、ただただ旅の途中を楽しむ。

MarryもZharaも、そしてTも僕も、生まれたところや皮膚や目の色が違っても、僕らはそういう精神を持っていて。


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レーの街に帰り着いて、僕とZharaはTundupの家に招かれた。伝統的な住居の中、お父さんとお母さんと暮らすTundup。

「いまのところ、暮らしはうまく行っているよ。未来がどうなるかはわからないけれどね。」

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Tのお父さんはそういった。

ご馳走になったバターティーは暖かくて美味しかった。

Zharaの最後の夜だったので
夜ご飯はカシミール料理のレストランに皆でいった。

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これが本当にうまくて、久しぶりに満腹で動けないくらい食べた。


「今度はケニアで!もし興味があればここにもいってみるといいよ。」
そういってZharaはケニアの「マサイ・デンタルクリニック」でのボランティアのことを教えてくれた。

文字通り、マサイ族の人達に治療を行うようだ。アフリカ大陸の行き先の一つは決まった。ケニアでサファリだ!(治療もする)