踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出た髭の人が世界中放浪した果てに結局海外大学院留学せずに帰国→家族でベトナム ハノイ移住→その後ドイツで大学院卒業→現在はカンボジアでのらくら。

楽園未遂。

5月15日。

「ラワ島って島が綺麗らしいよ」

というノブコからの情報をもとに、数々の楽園への拠点となる町メルシンへ向かった。

マレーシアといえば海!なのだが、ここまで1度も海で泳いでいない。

1日しか時間がないため、
日帰りできたら良し、出来なければあす朝にはジョホールバルに帰らねばならない。夕方にはシンガポールへ向かう予定なのだ。

なので、フェリーの時間が合わなければ島にはいけずじまいな可能性もおおいにある。

でも他にすることもなかったしね。


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出かけてすぐにパスポートを置いてきたことに気づいたけれど、戻るのも面倒なのでもういけるとこまでいくことにした。

KLではバスのチケット買うときも提示を求められたのでもしかしたらメルシンにすら行けないかもなーと思っていたが、すんなりなんのチェックもなく変えた。むしろバスに乗るときのチケットのチェックすら無かった。(爆

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2時間くらいぐーすか寝てたら無事メルシンに到着! あのハリウッドみたいなのってなんなの?港町はみんなあんな感じにする決まりなの?台湾のキーロンでもそうだった。

とりあえず帰りのバスを買っておこうと今日の夕方17時のチケットくれというともう満員と言われる。この時点で日帰り案は淡く消え去った。

仕方なく明日の朝7時半のバスのチケットを買う。

メルシンは歩けるくらいの小さな町なのでとりあえずフェリー乗り場を目指して歩く。

「ラワ・アイランド」と書かれたインフォメーションがフェリー乗り場の近くにあった。

日帰りしたい!それか、向こうで一泊して朝早く帰ってくる便はあるか?と聞くものの、「そんなもんあるか一昨日来やがれ」という空気で対応される。

なんでも最低限一泊はしないといけないらしく、フェリーは1日1便で、明日の帰りの便は昼過ぎだとか。

つまり楽園ラワ島にはいけない、ということですね!


他の島にはいけないものか聞いて回るも全滅。ちょっと色んな島をまわって帰ってくるツアーも「いまあんま客がいないからやってない」そうだ…

楽園への道は険しい!

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見かねた1人のおじさんが「メルシンには他にやることはないが、実はビーチがある。よかったらそこに連れてってやろう」と話を持ち出してきた。

60リンギットで往復、あとでピックアップにいってやる。というそこそこの値段をふっかけられたが、マレーシア滞在もあと2日。リンギットが少し余っていたのと、どこかに行きたい一心で話に乗ってみることにした。

とりあえず先に宿を押さえたいと言うと「バックパッカーズでよければ一晩20リンギットの所を紹介してやる」とのことで、案内してもらうと歩き方にも載ってるところだった。

ものっすごくユルい宿で、「あ、ノートに名前書いててくれたらオッケーだからー」とパスポートチェックもなかった。パスポート持ってなかったのでこれは助かった。本当に簡素な宿。眠るだけだ。


メルシンのビーチにおっちゃんの車で向かった。
30分くらい車で走っただろうか。
僕らはビーチについた。


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誰もいねえー!

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見渡す限り誰もいねえー!

「ほんとにここでいいか?やめてもいいぞ?」とおっちゃんが聞くが、とりあえず来たからには楽しんでやろうと思った。

15:30に迎えにくることを約束しておっちゃんは帰っていった。

昼時だったのでとりあえず海の家みたいな所にはいる。

「なんか食えますか?」

「いいえ、クローズです」


かっぱえびせんの出来損ないみたいなスナックと水を手に入れて僕はとぼとぼビーチを歩いた。

ここら辺一体のレストラン全部、閉まってる。

ものっすげーゴーストビーチだ!


とりあえずビーチの端から端まで歩く。
水着に着替えて海に浮かんでみる。

海だよ!

と、ひとしきりはしゃぐものの「綺麗といえば綺麗だけど、ぶっちゃけそこまででもないビーチ」でテンションを保ち続けるのは難しかった。

海はきれいだなあ。
空も青いなあ。

1人、寄せては返す波を眺めてみる。






帰ろう。


約束の時間まで3時間は、流石に暇過ぎる。



3時間あれば、メルシンの町まで歩いて帰れる気がする。
60リンギットこれに払うのも嫌だ。帰りは歩いて帰って絶対半額以下にしてやる。よう考えたら高いわ!

ビーチ滞在時間30分。

僕は車で来た道を歩き始めた。

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歩いてる人も1人もいない。
あるけどもあるけども椰子の木だ。

最初の1時間くらいは良かった。
田園風景もきれいだったし、歩くことも楽しめた。放牧されてる牛に戦闘態勢をとられてびびったり、それなりに楽しいこともあった。


2時間くらい歩いた頃に「なんであるこうなんて思ったんだろう」と思い始めた。
炎天下のマレーシアの気温がどんどん体力を奪っていく。

ヒッチハイクとかできないか?と恐る恐る親指を立てた。

ちなみに3時間では到底辿りつかない距離だった。

何台も通り過ぎていくなかで、一台だけが止まってくれた!

「どこまでいくんだ?」

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Heryという名前のこの男性はフラフラの僕を見かねて車で拾ってくれた。
メルシンまでいきたい、本当に助かります、ありがとう。僕は歓喜の叫びをあげながらお礼をいった。
Heryはメルシンの町でレストランをやっているらしく、料理につかうバナナの葉を近くの町まで仕入れにいった帰りだったらしい。

人生初のヒッチハイク

20分もかからないくらいでメルシンの町に帰り着いた!かみさま!ありがとう!



「なんと!どうやって帰ってきたんだ!やはり暇過ぎたか!」

さっきのおっちゃんがいた辺りに金を払うために戻ると親父が目をパチクリさせていた。

徒歩とヒッチで帰ってきた!と僕は半額の30リンギットを渡した。
おっちゃんは運のいい奴め、と頷いて金をうけとった。



宿にもどって一眠りする。
この宿に七ヶ月、全部で6年間も旅をしている爺さんがこの宿にいた。何人だかわからないがスペイン語訛りの英語を話していた。態度がでかくて横柄なひとだった。


夕日を見にいこうと夕方に海岸線の方へ歩いてみる。

メルシンの町の小さな港町感はとても好きだ。何もない、静かで、田舎の港町。

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海岸沿いの岩場はフナムシもおらず僕はしばらくそこに腰掛けて夕暮れ空を写真に撮っていた。

日本で友人の杉田くんがあんまり芸術的なセルフタイマー写真をとるので、自分もいつかやってみようと思っていた。
実際やるとなかなか上手くいかないものだ。

かっこいいポーズとかとりたいけど恥ずかしいもんやでこれは。

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空の色がどんどん移り変わっていくのをみていて、色んなことが頭に浮かんだ。

ふと「こうやって旅を続けることに意味があるんだろうか」と思った。

「意味」みたいなものがあるから旅をしているんではない、そんなこと自分でも百も承知なのだが。

僕はどこかでいつも「誰かに見られていること」を意識してしまっていて、「意味のあることをしていきたい、していかなきゃ」と思ってしまっているのではないか。

言うなれば僕は「意味の奴隷」だ。

遠く離れていても、僕は結局まだまだ自由ではないのだ。

どうして僕は少数の自分とはソリの合わない人間の顔色ばかり気にして「意味のある旅」なんてものを求めてしまうんだろう。

僕はもっともっと自由でいられるんじゃないのか?

日本を出る前、友人がくれた手紙の中の一言を思い出した。

「あなたがさらに自由になるのが楽しみです。いつでもあなたが自由であることを願ってるよ」

いい言葉だな、と僕は思った。
まるで僕がこんなことを考えるとわかっていたような、優しい言葉。

正解がないからこそ、人生を肯定してほしい日がある。

世の中に1人でも僕が自由であることを祈ってくれている人がいることを忘れずにいよう。


海も暗くなってきて僕は宿に戻った。
Heryのレストランを探したがいくら歩いてもみつからなかった。
お礼をしたかったのだが。

楽園未遂の夜。締め切ったドミトリーの部屋は蒸し暑く寝苦しかった。