踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出たナッカーサーが世界中放浪した果てにイギリスの大学院に留学するのかどうか、という毎日を綴るブログ。可能性迷子の毎日をお届けします。

キルギス⑤〜馬に乗ってSong kulへ

9月29日

朝、買い込んできた食料からパンやチーズを食べて、少しの運べる食べ物をリュックにつめた。

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トイレが離れにあって、朝方そこに向かうと、宿の主人が馬の世話をしていてこっちにこいと僕をよんだ。

馬小屋の裏側に檻があった。
そこにいたのは紛れもない、狼だった。

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生まれて初めて見た狼は、美しい生き物だった。僕は狼の目が気に入った。なんでも見通しているような知性を宿した目。怯えているのか、僕が近づくと檻の中で右へ左へ動いていた。

ソン・コルという湖に向かうのに、主人が馬に鞍をつけたりして装備を整えている。彼を含めて四人で湖に向かうのでこの家の馬だけでなく、他の家からも借りてくるようだった。

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ソン・コルまでは行きに4時間、帰りに4時間、かかる。
僕らは9時半ごろ出発した。初めて乗る馬は当然最初どう操ればいいのかわからなかった。

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スペイン人のフリュとDavidは小さい頃少し乗ったことあるとかでなかなか上手く馬を扱うのだけど、僕にとってはこれも未知との遭遇で、もともと不器用なのも合わさって上手く操れず、最初からかなり出遅れてしまった。

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僕の馬も走りたくないのかなかなか歩いてくれない。宿の主人がおもいっきりおいたてるとようやく動いてくれて、なんとか僕らは出発することができた。

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馬の上から見る景色は爽快だった。
村をぬけて、草原にでた。遠くの山には雪が積もっていて、草原には馬が沢山おり、綺麗な小川が流れている。

ゆっくり歩く馬の上からこの景色を見るのは、雄大で、本当にもう小さいことなんかどうでもいいと思える。

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馬はだんどんと山を登っていった。
草原が荒れた山肌になり、だんだんと雪景色に変わっていく。
高度があがると、坂道も厳しくなり、馬が疲れてきているのを感じた。

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馬が家畜化されたのはいつかしらないけれど、かなり昔から馬と人間はうまくやってきたはずだ。
馬に乗っていると、すごく楽しいのは紛れもない「生き物」と一緒に走っているということ。

車やバイクは、コントロールしなければならない。どこへ行くにもいつも気を張って操作しないといけない。でも馬は生き物なので僕がぼうっとしていても群れの中の前の馬についていってくれる。何時間も乗っていると慣れてきて、右に行きたいとか左へ動いてほしいとかを何となく手綱で伝えれる気がしてくる。

疲れてるな、というのを肌で感じるのも面白い。馬が疲れて、息が荒くなってきたら、自然と水場へ水を飲みにいったり、草を食べたりする。
適度なところで休憩しながら山をすすむ。

なんというか、疲れている馬に優しくなれるのは、とてもいいことだと思う。僕は自動車を,ねぎらったりするほど愛せないけど同じように生きている生き物が足をつまずいたり、息を切らせたりしながら自分を運んでくれるのには感謝の念を覚える。

馬が草を食べるときすり潰している音がゴリゴリすごくて感動した。ものすごく臼歯がうまく働いているんだろう。

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4時間かけて雪山を登り切ると3500mの標識があり、その向こうにソン・コルの湖が広がっていた。

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あたり一面の眺めも素晴らしい。雪山に囲まれたソン・コルの湖は声にならないくらい美しい。

僕らはなんの音もしないその神聖な山頂でしばらくだまって惚けていた。


持ってきたパンやチーズを食べてしばらくして下山を開始する。

下りのほうが滑りやすくて少し怖かった。でもこの頃には馬に乗ることには慣れてきていた。
鞭で強くお尻を叩くと早く走ってくれるのは本当だった。あと、踵で横腹を蹴ると走ってくれる。
ただ、走ると振動がものすごい。
帰り道の途中くらいにはお尻がえらいことになってしまっていた。かなり痛かった。

馬はこの辺りでは50000ソム(十万円)くらいでかえるらしいが、首都ビシュケクに集まってくるいい馬はその倍はするんだとか。



当初、二泊3日で行く予定だったのだけど、僕とフリュは「1日で十分だったな」と顔を合わせてそう言っていた。

やっとの思いで帰り着いて馬を降りると、真っ直ぐ歩けないくらい足の付け根からお尻がいたい。
3人でヒィヒィいいながら家に入る、とりあえず紅茶で乾杯した。


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この辺りでは5歳くらいの小さな子どもでも馬を操る。これは衝撃的だったんだけど、僕が乗っていた馬を小さな男の子が迎えにきて(他の家の馬だったんだろう)自分の背丈の倍はある馬にひょいっと跨って、鞭でバチバチ馬を操ってあっというまに遠くへいってしまう。

これにはもう、すげー!と思わず日本語が口からでてしまった。


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夕食に買ってきたパスタを茹でて、トマトソースとソーセージに絡めて食べた。
食べ終わったころに宿の主人のお父さんが来て、色々話した。

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お父さんは『クミス』という名前の(もはや日本語では表記できない発音だけど、たぶんこれが一番近い書き方だと思う。)馬のミルクを発酵させたお酒を振舞ってくれた。

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馬のミルクを一ヶ月発酵させてつくるらしく、家の廊下の下にある倉庫からペットボトルがひっぱり出されてきて、その中に白い液体が入っていた。

「馬の肉を食べて、クミスを飲んでいれば、100歳までも120歳までも生きられる」

とお父さんはいう。
クミスは薬のような使い方もされるらしく、そのときは
五日間徐々に量を増やしながら飲んで、そのあと五日間はだんだんと量を減らしていく、という飲み方をする。そうすると、肝臓や、頭に(?)いいんだそうだ。

クミスの味は、うーん、酸っぱい牛乳にお酒が混じったような感じなんだけど、最初は結構きつかった。
しばらく飲んでると大丈夫に、なってきて、結局飲みきれなかったDavidの分も僕が飲んだ。

ハラショー!と親指と小指を立てるお父さん。(これがキルギス風のサムズアップなのかもしれない)

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お父さん、ほんと、お腹壊さないことをいのるぜ。


明日はコクボルという、キルギスの伝統競技を見せてもらえるようにお願いした。

馬に乗って4対4で、羊をボールがわりに投げて競い合うフットボールみたいなやつ、っていわれても想像もつかない。
僕らは3人で「一体どうやって羊をボールみたいに放り投げるのかなー?!」と盛り上がっていた。

独立記念日に行われるコクボルの大会で優勝すると、1000000ソム(大体二百万円くらい)の賞金がもらえるというくらい、この国では国民的なスポーツらしい。

ちなみにコクボルの競技後に球としてつかった羊は皆で美味しくいただくらしい。ばんばんぶん投げられたあとだから、さぞかし肉が柔らかくなってるだろうなー!とDavidがガハハと笑った。もちろん明日の羊も皆で食べる。


夜、目をつむるとまだ馬に乗って進んでいるような感覚が残っている気がしたのは、クミスのアルコールのせいだったのかもしれない。