破壊の神と、マザーテレサの愛と。
9月9日
カーリーというヒンドゥーの女神が祀られている寺院へ朝からいく。
いま読んでいる本では、カーリーという女神は以下のように説明される。
カ ーリ ーの図像は 、目は血走り 、真っ赤な舌をだらりと垂らしている 。そして手には 、血のりのついた剣 、三叉戟 、輪縄などの武器と 、切り取った魔神の生首 、滴り落ちる血を受けるための髑髏などを持っている 。首からは頭蓋骨をつないだ首輪を掛け 、腰には人間の手をつないで編んだ力士のさがりのような飾りを巻きつけている 。礼拝の対象としては 、まことに異様な 、おどろおどろしい像である 。 「カ ーリ ー 」というのは 、 「時間 」と 「黒色 」の二つの意味をもつ 「カ ーラ 」という名詞の女性形で 、 「時の女神 」 「黒色の女神 」の意である 。彼女は神話に見られるように 、文字どおり 「黒き女神 」であると同時に 、生命を与えては 、それを破壊しつづける生と死の永遠の時間の象徴でもある
誰も時間の流れから逃れることができず、「破壊」されてしまうものだが、カーリーというのはそういう『時間』そのものの象徴なのだそうだ。
なにがこのカーリー寺院で特筆すべきかというと、なんとここでは毎朝ヤギが生贄に捧げられ、首をおとされているそうなのだ。
ぼくは、まあ怖いものみたさと、生贄というもののリアルを感じてみたいとの思いから足を運んでみることにしたのだった。
カメラは持ち込めず、カバンも預けないといけないと書かれていたので、なにも持たずにホステルをでる。
地下鉄で20分くらい。カーリーガートという駅でおりる。
まだ7:30くらいだったからかそんなに声をかけてくる人もいなかったが、寺院が近づくにつれて、人気は多くなってきた。赤い花をお供え用に売っている店が寺院への一本道にならんでいる。
案外一度も鬱陶しい輩に声をかけられることもなく寺院にはたどりつけた。
「俺はガイドじゃない、寺院の係員だ」となのるおっちゃんが僕を寺院の近くから自然にエスコートする。最初は無視していたのだが、「ほら、この赤い花持って!名前は?父親の名前は?母親は?兄弟は?結婚してる?よし、祈れ。」と無理やり花を僕に渡しては祈りの儀式に導かせ、ぐるっと寺院を一周し、あれよこれよと説明してくれる。寺院の中はすごいひとで、僕はなんとなく圧倒されてしまってして流されるままおっちゃんについていっていた。
「ここがヤギや水牛の首をはねるところ。ヤギは毎日、水牛は特別な時だけな。」
そこは思ったより狭いスペースだった。祭壇の下は赤黒く染まっている。何時から生贄の儀式は始まるのかと聞くと、10時からとおっちゃんはいった。
早く来すぎた。。。
2時間もこのへんで時間潰すのめんどくせーだってどこ見ても午前中としか書かれてなかったんだもんなー
「ほら、最後にこっちのシヴァの祠に御参りして。」
と別の祠につれていかれてまた別のおっちゃんが僕に祈りの儀式を捧げた。
赤とオレンジで編まれた紐を腕に巻いてくれた。
「いい旅をな」だそうだ。
さ、寄付を。ほら、1000ルピーもあれば十分だ。ほれほれ、はやく」
とインドお決まりのパターンできたので僕は心ばかりの20ルピーをそっと祭壇においた。
当然「No〜」とおっちゃん達は安すぎると訴えるのだが、払うだけいいやんか!
このお金は外国人に貴重な信仰の場を公開してくれているこの寺院への感謝の気持ちだ。(もちろん、寺院には渡らない可能性はたかいだろうが)
案内を終えたさっきのおっちゃんが「花の代金50ルピー、あと俺にも、ゲフン、まあいくらかな。」
という。いやいやガイドちゃういうたやん、とかもう色々言うのも面倒だったので花を買ったお釣りをおっちゃんにわたした。
「隣にマザーテレサの建物があるから、10時までそこにいたらどうだ」
そういわれて僕は言われるがまま寺院をでて左に少し歩いた。
そこには緑色の建物がたっていた。ガイドブックも何も持っていない僕は何の施設なのかわからなかったがとりあえず扉を開けてみた。
開けようとした扉は向こうから開いた。中には2人お年寄りが緑の服をきて座っていた。入ってもいいかと聞くと僕を招き入れてくれた。
そこには同じく緑色のベッドがならんでいて、シスターがひとり立っていた。
「あら、ボランティアの方?」とシスターは優しい微笑みを向ける。
「いえ、あの通りがかっただけなんですが、ここはどんな施設なんですか?」
あなた、マザーテレサはご存知?とシスターは聞く。
「ここはマザーが1番初めに作った施設です。」
印象的だったのは建物のなかの穏やかな空気だった。ここがコルカタだと信じられないくらい、空気も人も穏やかだった。
あとから調べたところによるとどうやらここが『死を待つ人の家』と呼ばれる場所のだったようだ。
僕はしばらくしてそこを出ると、10時を待たずに一度宿に帰ることにした。
理由はもう、なんとなくとしか言えないが、2時間まってヤギの首が落とされるのをみるのもなあ、と思ってもいたし。「2時間でもいいからここで何か手伝わせてくれんませんか?」と聞くのもなにかそういうタイミングでないような気がしたのだ。
一旦宿に帰って荷造りをする。12時のチェックアウトまで色々と調べ物をしていた。