踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出た髭の人が世界中放浪した果てに結局海外大学院留学せずに帰国→家族でベトナム ハノイ移住→その後ドイツで大学院卒業→現在はカンボジアでのらくら。

ガンジス川へ。

9月2日

4時50分にバラナシにつく列車が結局4時間遅れる。駅についても車内放送とかあるわけじゃないので「電車おくれてるからあと3時間くらいかかる!」とか言われても大体3時間後にまた起きて、大体止まった駅で周りのひとに「ここどこ?」と確認するしかない。


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列車の中はたまにチャイを売る兄ちゃんが「チャーイチャーイ」といいながら歩いている。この声のトーンが独特で耳に残る。


ようやく「ムガールサライ」という目的の駅につく。ここからバラナシの街までトゥクトゥク
降りるなり鬼のように運転手達が声をかけてくる。


Air bnbで見つけていた宿泊先の住所を見せて、運転手に電話をかけてもらい、ホストと連絡をとり、1時間ほどかけてバラナシの町へ。

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途中の道が悪く、前のトゥクトゥクが動かなくなりその乗客も乗せて途中から乗せていったのだけど、降りるなり「時間かかったから追加料金くれ」と運転手。
へっ( ゚д゚)鼻で笑ってやったぜ。なんかもういちいちつっこんでらんないぜ!



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Assi gartという場所の近くで降ろしてもらい、Naveenという宿のホストと合流した。

宿は簡単なつくりだったが、部屋も悪くなく、値段のわりには簡素すぎる気もするが、朝食付きで、さらにローカルで信頼できる人(この時点で確信はなかったけれど)から情報を得れるのは貴重だなと思った。

まあもう誰に騙されてもおかしくないのがインドなので、最初は色々と疑っていたけれどNaveenとその家族の優しい部分には触れられたと思う。

「午後から、ここに泊まっている他のゲストと一緒にガンジス川のボートトリップにいこう。」と誘ってくれた。

値段も安かったので行くことにして、時間があったので夕方まで時間潰しに街へでてみる。


しかしまあ、バラナシの町はカオス過ぎる。
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猿、牛、犬がそこらじゅうにいて(インドでは牛、猿は神聖な動物)、糞もそこらじゅうに落ちている。

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車やトゥクトゥクがこれでもかというくらいひしめき合っていて、クラクションの音も止むことはない。中心街をあるいていると5mに一回は詐欺師ぽいひとに声をかけられる。

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中心街から有名な寺院を目指してあるくも、声をかけてくる人達を無視するのにも疲れるくらいで、かなりきつい。

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うろうろしていると露天に売ってるペットボトルをサルが奪っていっておっちゃんがそれと戦っているのをみたり、牛にくしゃみを吹きかけられたりする。
牛の糞を素手で処理してて道に投げ出してくるおばちゃんもいる。


これは、なかなかつらい!

ものすごいカオス感に耐えかねて一旦宿へ帰る。




とりあえず夕方まで休憩してガンジスのボートトリップへ。

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同じところにとまってるギリシャ人と、チリ人2人といった。Naveenが交渉してくれていて、費用は他と比べてかなり格安みたいだ。


ガンジスのよどみっぷりは半端なかった。1mmも中が見えることはない。


色々な寺院(ガートと呼ばれている)を見ながらゆっくりと船は北へむかう。

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最初ははしゃいでいたチリ人2人も、しばらくすると静かになり、ボートは無音のガンジス川をゆっくり漂っていた。


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聖地という場はなんとなく人を沈黙させる。


ちょうど日が暮れてきて、夕焼けが染まる頃にボートは「火葬場」についた。

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365日、24時間。
ここではずっと、インド中から来る人の遺体を焼いている。たぶん気の遠くなるくらいの昔から。

火葬場の周りは蒔になる木がつまれていて男たちが火を囲んでいる。夕闇が辺りを包むにつれて火の力が強くなるようだ。火の粉が美しい。立ち上がる煙が頭をぼうっとさせる。

紫色に変わっていく空をおびただしい数の鳥が飛んでいる。それはなんとも、僕がいままでに見たことのない異様さを見せていた。

30分くらいだろうか、僕はずっと火を見ていた。

この気の遠くなるほど続いてきたであろう営みと、この町の混沌を思って、「そうか世界は変わらないのか」とぼんやり思った。

世界はいつでも変化していると同時に、永久に変わることがない。


その中で僕は何を「変えよう」としてきたのだろう。そしてしているのだろう。
変えられるものなんてあるのだろうか。
ただ、生きることや、仕事をすること、ボランティアをすることを通じて。

小さな変化はやがて大きな波に。そうやって人間の社会は変化し続けてきたけれど。

こんな得体の知れない世界の、何かを、変えようなんて本当に、おこがましいことなんではないのか。

「人間にできることは自分を正すことだけや」という剣道の師匠の言葉や

「政治は結果的に何も変えられない。世界を変えることができるのは物語だと信じている。」というとある人類学者の言葉を僕は思い出していた。

つまり、どこまでも、この世界は一般化されることがない、一つ一つの物語で構成されていて。


僕がこのときぼんやりと心に感じたことを言葉にするのは、まだまだ時間がかかるだろう。そうしてこのいま感じている感覚もまた脚色されながら、なんらかの新しい考えに結びついていくのかもしれない。


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ボートは日がくれるとセレモニーを行っている場所に寄った。少女がガンジスに流す送り火を売っていて、なんとなくみんなでそれを買ってながした。

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近くのホテルの屋上のレストランが安くていい感じだというので、四人でそこで夕食を食べた。


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確かにここのルーフトップはバラナシとは思えないくらいいい雰囲気だ。

パンジャーブ地方とシーク教徒の話をしていた。今回はいけないけれど、今度は是非いってみたい。シーク教徒は髪を切らないであのターバンの中に巻いているんだそうだ。で、その髪の毛が赤ちゃんの髪くらいさらっさらなんだとか。なにそれ見てみたい。


この日はすごく疲れてて、泥のように眠った。早朝また、ガンジスへ。