踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出た髭の人が世界中放浪した果てに結局海外大学院留学せずに帰国→家族でベトナム ハノイ移住→その後ドイツで大学院卒業→現在はカンボジアでのらくら。

Himalayan dental project camp②

8月22日

朝8時にゲストハウスで朝食を食べて、そのまま学校へ向かう。

今日はボランティア2日目。

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鬼のような忙しさが僕らを待っていた。
歯科医師3人、学生2人で、300人を超える生徒達の口腔内をチェックして治療もするという荒技。

写真を撮る暇も一切ない位、良く働いた一日だった。

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口の中を見ていると、色んな事が見えてくる。が、素材も限られていて、機材も限られている中でどこまでのことをすればいいのかは、はいつも一番難しいところだ。

痛みのない大きな虫歯をむやみに触って、逆に痛みをだしたら?ここにはフォローできる人は誰もいない。

そう考えると歯の交換時期にある子供たちの虫歯はむやみに触らずにおくほうがいいのかもしれない。(そもそも全部を治療できる時間も素材の余裕もない。

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痛みのある歯を優先して。
根っこまで強い炎症が及んでる乳歯は抜歯。年齢によって触るかどうか考える。

100人も見ているうちに、自分の中でそれなりの基準ができてくるのだけど、面白いのは、歯科医師3人の見解がだんだん一致してくることだ。

合理的に考えた結果のこの場の状況を踏まえたで 最良の「診断」は時間がたつにつれて情報が共有されることもあるが、統一されてくるものだな、と思った。

ただ、そこには多くの「妥協」が含まれていて、忙しくなってくるにつれて「触らなくていいライン」が甘くなってくることは否めない。

昼ごはん(インドってほんまに三食カレー。ずっとカレー。)を食べて少し仮眠して、午後診療。

忙殺とはこのこと。ひっきりなしに生徒がやってくる。

一世代前の日本の歯医者さんはいつもこんな感じだったんだろうか。診療室に溢れかえる患者、という図をぼくはヒマラヤで始めて経験した。

結局、全学年を診ることができず、Hymalayan dental mission 一行は一日延泊し、明日もここに滞在することになったのだった。


診療を終えたあとの甘いミルクティーがほんまに美味しい。(歯にはよくない)



「ほんとはもっと予防を広める活動をして行きたいんじゃないの?」

僕はMarryに聞いた。

何百人を削って詰めて抜く。
その行為自体が、ラダックの人々の口の中の健康に直接繋がっていかないのは火を見るより明らかだ。

なぜなら「どうやって虫歯を防ぐか」を人々が自分たちで知らない限りは、歯を削って詰めたそばからまた新しい虫歯ができ、いつまでたっても「虫歯のない状態」にたどりつくことはないからだ。

Marryは頷いた。

「本当にね。でもね、予防の大切さを伝えるのは本当に難しいの。本当は痛みがないなら触らないくらいでいいと思うの。設備も材料もないからね。で、予防に特化して作戦を組めるといい。でも、そういうことを学校に相談してもなかなかわかってもらえない。そこには「治療への需要」があるから…。 政府の方に働きかけても、なかなか予防の方が予算も安く済むとは認識してくれないしね。」

確かに「虫歯の治療」が「歯を削って詰めること」「痛みがある歯を抜くこと」が前提のなかでは患者さんが求めるものはそういった「治療」だ。

そういった需要に応えつつ、地域の信頼を得て、予防(具体的にどんな作戦をたてれるかはその状況によりけりだが)を繰り広げることができるかどうか。

またこの辺りは今までの経験と踏まえて比較していきたい。


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診療後はhunderという近くの村に皆で向かった。ここには砂丘があってラクダがいっぱいいる。
旅行者向けの場所なのだけど、風景は素晴らしい。

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ヒマラヤの山々に囲まれた砂丘の上をラクダが列をなして歩く様子はなんとも神秘的だ。

「ラダックに来る人はいても、ここまでくる人はなかなかいないのよ。でも、ほんとにこの辺りは美しい。」

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心を打たれる風景だった。
地球にはまだまだ見たこともないような景色がたくさんある。

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ラダッキーの女子三人組Lamo、Tundup、ヤンチョンは大はしゃぎでラクダに乗っていた。乗り終わったあとは身体中しっかりラクダくさくなっていた。



砂丘をあとにしたぼくらは
Tundupの親戚の家に招かれて、ラダック伝統のバターティーや、お菓子をご馳走になり、伝統衣装を着せてもらったり!

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大はしゃぎ!

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天井を支える気の数は必ず奇数と決まっているらしい。一つめが幸福としたら、最後もまた幸福で終われるように。

最終的にまた地酒の「チャン」をもらって、ぼくらは宿へ帰った。

夜、ご飯を食べ終わったあと

「髭の人は本当に診療中の姿勢がいい!」とみんなに褒められた!

働いていた医院での教育が生きていて嬉しい限り!

この日は疲れていて、せっかくのチャンを飲むことなく寝てしまった。

ラダッキー三人娘はこの日もしっかり飲んでいて隣の部屋からは笑い声が絶えなかった。