踊る髭の冒険

30歳を目前に仕事をやめて旅に出た髭の人が世界中放浪した果てに結局海外大学院留学せずに帰国→家族でベトナム ハノイ移住→その後ドイツで大学院卒業→現在はカンボジアでのらくら。

Himalayan dental project camp

8月21日 14:00

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小学校につくと、僕らは食堂のようなところへ通された。Marryが校長先生と話しあって、簡易チェアーを設置する場所を決める。

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明るい廊下を選んで一行は準備を開始した。低速エンジン(歯を削るやつ)、歯に詰めるセメント(主にグラスアイオノマー)、抜歯セット等々。

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ドライバー兼お手伝いのNori.器具の洗浄や滅菌をしてくれてた。滅菌するオートクレーブもちゃんとあります!



一通り準備が終わったあと、僕はMarryに
どんな風に診療していったらいいのか聞いた。

「まずチェックして、診断、こういう書き方してるんだけど」と僕にカルテの書き方を書いて見せた。

日本ではカルテは日本語でしかかかないのでここでハードルがぐっと上がった気がした。正直緊張した。

RFA  来た理由
C/O  主訴
DX    診断
RX     治療
NV    次回の予定

と5項目に分かれているらしく。まあなんとかこの辺はやってのけた。
(負け惜しみだけど、慣れれば簡単だった!)

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虫歯がすごく多い子どもが多いんだけど、全部は治療できないので、主だったところと、炎症の強い歯の抜歯、そして大人の歯への予防処置(シーラント)がメインの治療になっていく。

生徒たちはどんどんくる!

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僕は心からこの状況を楽しんでいた。
たとえこれが「目の前の痛みをとる」ためだけの治療だとしても。

4時半ごろまで診療は続いた。

新しく使う機材や、初めてみる方法もあって新鮮だった。

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治療が終わると、僕らはゲストハウスに帰り、お茶を飲みながら休憩し、この辺りにある崖の上の寺院にむかった。

道すがら、車の中でMarryと色々話した。

彼女はスウェーデンの大学を卒業後一年歯科医師として働き、それから世界中旅しながら色んなところでボランティアをらしてまわり、その中で自分が何ができるのか探していた。(どこかで聞いたような話だ。)その後、2年前からこのラダックで有給で歯科医師として働いている。

びっくりしたのは彼女が同い年だということで、彼女のここでの活躍は本当に賞賛に値する。僕が今まで出会ってきた先をゆく先生方や団体と比べるとまだまだ、成し遂げた物は少ないかもしれないが、何よりも、彼女にはハートがあって
このコミュニティの人たちがMarryを愛しいて、逆もまた同様だということが、近くにいて本当によくわかる。

「公衆衛生のね、勉強をまたしたいなと思ってる。あたしがやりたいことをやるにはそっちの知識が必要だから」

僕は自分がイギリスで医療人類学を学びたいということを話した。

「文化の中にある習慣を変えて、健康を増進するってほんとに難しいよね。ラダックでも上顎の歯は目と繋がってるから抜いたら目も悪くなるっていう迷信を信じてるひとが多くて、上の歯を抜きたくないってひとも多いもの」

僕らは「病気」の見方がそれぞれであることや、「文化」を変えてまで僕らが現代医療を持ち込む意義について少し話した。

僕は嬉しかった。
人間は一人一人違って当たり前。

それでも探せば、動き回れば、似たようなことを考えて行動している人間は確かにいるんだ。

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大きな大仏を見上げた。

極彩色の大仏は街を見下ろすように悠然とヒマラヤの風の中に立っている。

ラダック人スタッフのTが頭を地につけてお祈りをしていた。3回しなければいけないのだといっていた。

イギリス人の歯科学生のJackが言った。

「世界を周りながら、歯科医療をしてまわるのは本当に楽しそうだな。僕はいつも、皆が英語を上手く話せるのを見て心を打たれる。みんなそれだけ勉強して、やりたいことに望んでるんだよなあ。」

ネイティブにはネイティブの思いがあるんだなあと僕は思っていた。

正直言って僕は他国のメンバーと比べて英語力は低い。診療は問題ないけど、日常生活でネイティブが本気で喋るとなにいってるかわからない。

でももう僕はもう「英語うまいね」なんて言われるような、段階でいたくない。普通に話せて当然。

英語でコミュニケーションとれて当然。
それが前提で日本人以外の団体にボランティア申請しているんだから。自分が意思の疎通ができないからチームワークが乱れるようなことは絶対にあってはならないと思う。

僕はもう意地でも「僕は英語下手だから、、、」なんてことは言わない。毎日毎日、1年半コツコツ積み重ねてちょっとずつ語学力をあげてきたんだ。

そんな言葉を言ったら三ヶ月フィリピンでお世話になった英語の先生達に申し訳がない。そこは意地でも、食らいつきたいと思う。

Jackにはイギリスの歯科教育事情も色々と教えてもらえたのだが、その話はまた後日まとめようと思う。




大仏を後にして、車を走らせるなか、Marryが言った。

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「さ!地酒探しにいくぞ、地酒ーー!」

一行はイェーイと歓喜の雄叫びをあげて、一路夜の街を「チャン」という地酒を探して彷徨うのだった。